〈ブラック・マジック・ウェス〉サンタナ?

〈ブラック・マジック・ウェス〉サンタナ?

ロック界の雄、今も君臨しつづけるカルロス・サンタナと聞かれ、私がイメージするのは〈ブラック・マジック・ウーマン〉なんです。
彼のデヴューはウェスの死後の1969年、その翌年にこの曲が大ヒットしたと思う。
サンバ系のブルーズを基本とし、サスティーンの効いたカラカラのギターとティンパレスが妙にマッチするサウンドに針とシングル盤が擦切れるほど聴いた覚えがある。
またラテン・ロックなる言いまわしも彼が最初じゃなかったですかね。
元来、私の音楽好きはラテンから出発しているので単なるラテンじゃなくロックを融合させたことに、一時とりこになるほど・・それと彼のテクにややジャズの雰囲気も感じたことが魅力だったですね。

そのサンタナが3人のギタリストに多大なる影響を受けたという、彼自身の出演によるビデオが1995年にリリースされていた。
三宮の楽器店で偶然見つけたが、売れなかったのかダンピングし山積にされてあった。
内容的に今言ったようにサンタナの音楽ビデオではなく、影響を受けた3人の奏法の解説とそれを真似て部分的に演って見せるものだけに一般受けしなかったと思われる。

このビデオ、アメリカDCI-ミュージックから発売権を得たヤマハ・ミュージック・トレーディングという会社がリリースしているもので、サンタナによる3人のギタリストの説明のほか、ウェスに関してはBBC-JAZZ-625の映像を交え、2~3の未発写真を含んではいるものの音楽的には目新しい発見はなかった。サンタナの興味あるウェスについての解説文を紹介する。

 「僕が大きな影響を受けた3人の音楽家、ボーラ・セッティ、ガボール・サボ、ウェス・モンゴメリを紹介しよう。
多様な表現手段をもつ彼等が僕を触発してくれたが、彼等はそれぞれに伝統音楽や民族音楽から学びそれらを融合させた。
そのサウンドは、先人が築いたノウハウを取り合せたもので、チャーリー・クリスチャン、ジャンゴ・ラインハルトからパコ・デルシアまで全てのスタイルが含まれている。
先ずボーラについては、アフロ・ブラジリアンのセコヴィアだと思う。彼の才能と器用さはジミ・ヘンドリックスと同格だ。」(以下略)

 「僕はガボールを聴く以前はB・B・キングに傾倒していたが、年代を重ねるにつれガボールやウェスのことを知った。
彼等については今でも教えられるところがあるが、最初に気付いたのはガボールだった。
それまではB・B・キングしか見えなかったというか、夢中で他に目を向ける余裕もなかった。
ガボールはギターの可能性を示してくれたが、彼のおかげで聴く耳が養われ、ギターを演る楽しさも培われ、シンプルなものの美しさも理解できた。
何事も自分の内面をみつめる時が必要だと思う。まず最初は自分を触発させてくれる人をみつけ次に蛇が脱皮するようにそこから抜け出す事だ。
ジョー・パスやジョージ・ベンソンから脱皮し、自分のサウンド見つけることだ。
ひとりで練習し、人から受ける影響から抜け出すんだ。
最初は人から吸収するが、その後自分自身を見つけるということだ。」

 「ウェス・モンゴメリのサウンドは・・暖かい父親のようなサウンドだ。
愛情ある父親そのものだ・・【非常に父性的なサウンド】とビル・グラハムが形容していたが・・とても奥が深く、安心できる。
愛情ある父親と母親がいれば言うことはないが、とても落ち込んでいる時や自殺でもしたくなるようなとき・・ウェスの歌を聴けば・・ふと気持ちが落ち着き、悩み事が馬鹿らしくなる。

 サウンドを聴いただけで解かるほど個性が強いが、真似をしてもだめだ。
ウェス・モンゴメリは高貴だね、聴く者すべてを高貴にしてくれ、そのサウンドを聴いただけで世の中が変わってしまうようだ。例えば場末のクラブにいても・・目を閉じて聴けばそこは王族の宮殿になる。
彼の音楽はとても洗練され進化しているように思える。
デューク・エリントンと同じく僕等にとってのベートーベンだ。ヨーロッパにモーツァルトがいるが、僕等にはウェスがいるんだ。
ここにはいくつもの世界があ。B・B・キング、レスター・ヤング、コールマン・ホーキンス・・そういう人の影響が現れていると同時に独自の世界がある。
クラプトンも、フレディ・キングやアルパート・キングを真似たが・・決して個性を失わなかった。
ボーラ、ガボール、ウェスの3人は僕にとって禅の師匠のようなもので、彼等の音楽構成は気持ちを和ませ、何事も素直に受け入られるようになる。
ウェスから学んだことは観客を包み込み気持ち良くさせること・・今は雨が降っているが、明日は晴れるだろう・・という気持ちにさせてくれるんだ。希望が湧き、目の前から霧が晴れたようになる。

 グラミー賞を獲った僕のアルバム《サルヴァドールにブルーズを》・・中でも〈ベイア〉とい曲には彼の影響が強く現れている。
ヘンドリックスもオクターヴを使うが、人を引き寄せておいて、突き放す感じなんだ。
ウェスのスタイルで引き付けておいて・・シングル・ノートでまた突き放し・・引き込むと同時に突き放し、最終的には抱き込む感じだ。
僕はウェスのアプローチで聴き手を引き付ける。彼のオクターヴ奏法は聴衆を完全に虜にしてしまう。
具体的には手を固定する、この形のまま (注:映像では左手の指をオクターヴ奏法の形にして見せる) にしネック上を動きまわるんだ。彼の姿勢からは多くを学ぶことができる。

 巨匠というのは緩急のつけ方が上手いんだ。
ヘンドリックスは同じ音を2度弾いてこんな効果を出している (注:映像では実際に弾いてみせる)。
ウェスの演リ方は少し違う印象は強いがクールな感じだ (注:ヘンドリックスとは違う奏法で違うサウンドと説明している)。
音階やコードだけじゃない、彼等3人の演奏は心の和みを生みそれを人に与えた。
ボーラ、ガボール、ウェスの3人はスタイルというものを改めて創り出した。
彼等はひとつのノートで自分の心を伝えることのできる達人であり、ひとつのノートで崇高な世界を表現する。」

このビデオを通じて「彼等の哲学と姿勢を若い人に伝えることができ嬉しく思う。僕らの目的は売上を伸ばすことじゃない。僕等の仕事はその哲学と姿勢で人の心を射抜くことだ。
目的は人を感動させることだ。心のこもった楽器を聴かせることだ。」と締めくくった。

参考:Carlos Santana/Influences (カルロス・サンタナ/インフルーエンス)
ヤマハ・ミュージック・トレーディング LDC13031
VHS-STEREO 60分 日本語字幕版